エリックサウスのロゴ
エリックサウスの1号店、八重洲店をオープンしてから14年以上が経ちました。近年は東京以外の店舗も増え、あらためてエリックサウスのロゴについてご質問いただくことがありましたので、こちらで。

一部の店舗を除き、ロゴはロゴタイプ(ワードマーク)(文字だけのロゴデザインを指します。余談ですが、シンボルとかコンビネーションマークなどの分類があります。)で、
HOTEL
ERICK SOUTH
SOUTH INDIAN CURRY & BAR
MEALS READY VEG & NON VEG
A/C RESTAURANT
と表記しております。
一番ご質問いただくのが、冠のHOTELです。
[ミールスとは(https://info.erickcurry.jp/column/827/)]でも触れましたが、
南インドでは、HOTELはレストラン、食事をするところを指し、○○Hotelのような、店名の一部となっている場合も多いです。
ではホテルは?と問われればHOTELなのですが、そもそも高確率で宿全般名称に○○ホテルと入る日本でのHOTELの使われ方が若干特殊なので、名称に入っていなかったり、土地柄を含めてINNであったり、INN HOTEL、Internationalなどの明らかな名詞とセットになっていたり、うまく使い分けができているようです。
なぜそうなったかは所説ありますが、
南インドでレストラン文化が一般化される以前、レストランのような場所は、イギリスの人々が集まるホテルに限られていました。そのため、、というのが有力ですが、
フランスのパリを除いて、レストランが名称とともに確立、一般化されたのが19世紀中頃と言われていますので、そもそもレストランという名詞が広く知られることがなかった、レストランスタイルの食事はHOTELで提供されていたからが実な気もします。
いずれにしても、宗教などの文化により外食文化がなく、不特定多数と食事の空間を共にすることが少ない古くのインドにとって、文化圏の異なるところからもたらされたHOTELという言葉は都合が良く、外食文化という新しいスタイルを定着させるのに一役買ったのは想像に難くありません。さらに英語を正しくではなく、都合の良さで使うという、なんともインドらしさがHOTELの独自利用を確立させたのでしょう。
続いてが店名。ERICK SOUTH エリックサウスです。
ERICKは、あまり知られていませんが、ちょっと意外と思われる理由で付けられています。
もともと、エリックサウスを擁する円相フードサービスは「自分たちが本気で行きたい店」がコンセプトの居酒屋から始まった会社ですので、当初は店舗数を拡大しつつも、南インド料理とは、ほぼ無縁でした。
そんななか、エスニック系居酒屋をオープンした直後に、川崎にあるテイクアウト専門のカレー屋のコンサルティングを依頼されたのが、はじまりとなりました。
コンサルティングの主題が利益改善であり、手段が調理の効率を上げることであったためか、職人気質なシェフがある日突然やめてしまいます。コンサルティングから運営へ依頼内容が変更となったわけですが、一度は断りました。しかし、ほぼゼロからのカレー研究の後、お店の再開、自店としての営業に至りました。
そのお店の名がERICK CURRYであり、突然やめたシェフが、師匠の名前からもらった名がERICKでした。
南インド料理店となるきっかけも、この時に生まれます。
再開後、お店を構えるオフィスビルに入居しているIT系企業で働くインドのムンバイ出身エンジニアの方から「南インドのカレーに似ている」評されたことが小さくて、大きなきっかけとなりました。エリックサウスの開店にまで至る、南インド料理研究については、また別のお話。
ということで、エリックは前身のエリックカレーから、サウスはもちろん南インドからきています。
まだまだ続きます。
SOUTH INDIAN CURRY & BARは文字通り。
BARは、バル。カレーショップではなく、スパイスバルや、幅広い用途で使っていただきたいというコンセプトを込めています。
インドでお酒?と思われる方もいらっしゃるでしょう。確かに一部の州では全面的に禁止されていますし、宗教的なところも多々あります。
ですが、インドの長い歴史の中でも、20世紀後半が一番、飲酒に対して厳しい時代なためのある種の誤解。古くからのお国柄のように認識されている方も多いですが、その期間は1世紀ほどに限定されます。
このきっかけとなった一人が、かのマハトマ・ガンディー氏です。思想と影響力はもとより、独立後の政策の中に、一部州での全面禁酒や、国全体の禁酒日などが設けたために、現在にまで色濃く残る禁酒文化が形成されているわけですが、規制の緩和、習慣の変化や世代の移り変わりによって、様変わりしつつあります。
余談ですが、ゴア州は古くからポルトガル領であり、その体制はイギリス領のインドが独立した10年後、ゴア併合まで続いたため、他の地域とは異なる文化が形成され、前述の影響も他の地域ほどではありません。お酒を楽しむならゴアと言われるひとつの所以です。
ですので、インド料理はお酒とあわせない、あわないなんてことはない、むしろお酒とともに楽しんでいただきたいが当店のスタイルです。
そして、MEALS READY VEG & NON VEGの部分です。
ミールスについては長くなってしまいますので、[ミールスとは(https://info.erickcurry.jp/column/827/)][カレーとミールスの楽しい食べ方~エリックサウスの場合~(https://info.erickcurry.jp/column/463/)]を読んでいただけると嬉しいですが、
南インド、インドのミールス店は、MEALES READY、“ミールスの準備が出来ました”の看板が目印、インドの街風景のひとつ言っても過言ではありません。そのため、看板であるロゴにこの一行を盛り込んでいます。
昨今では、南インド料理店が日本でも増えたため、MEALES READY表記は日本でも以前ほど珍しくはないのかもしれませんが、本場の味を出すというコンセプト、ある意味、ニッチ、マニアな方に向けたある種のサインを、SOUTH INDIAN CURRY & BARと併記させることで盛り込んでいます。
最後に、A/C RESTAURANT。A/Cはエアコン付の意。インドだけでなく、稀に海外で目にする表記です。より良いサービスを提供するお店としての現地の冠的なニュアンスをオマージュしています。
これもまた余談ですが、インドではサービスの良さを謡うだけが目的ではなく、GST、付加価値税によるところもあります。そうです。エアコン付のレストランのほうが税率が高いわけなんです。
このあたりは日本とはまた違った感覚なのだと思います。飛行機のエコノミーとビジネスクラスでは、航空会社が設定する価格とは別に税率が異なりますし、車も車体の長さなんかで違ったり、(ス○キのクルマがインドで人気な理由。)映画なんかも税率の高い区分に入ります。総じてある種のステータスでもあったります。
いずれにしても、ゆっくりと食事を楽しめる料理とサービスを提供しますというのが、A/Cには込められています。
HOTELがレストランを指すのでは?という違和感はその通りです。
カレーという名称と使われ方や広まり方が近いのかもしれませんが、(詳しくは[インドカレーとは?(https://info.erickcurry.jp/column/816/)])レストラン表記のお店も、南インドにはあります。
伝わっていると嬉しいニュアンスですが、少し現地の看板感が、多分に盛り込まれたロゴデザインになっています。
レストランスタイルで楽しんでいただきたいというニュアンス。
カレーハウスではなく、南インド料理店であることが全面に出ているロゴなのではと自評しているところです。