ミールスとは

ミールスとは、南インド料理を象徴する食事のスタイル、ベジ(菜食)料理とライスが中心の定食を指します。エリックサウスの看板で掲げているMEALES READYはまさにこれであり、南インド、インドのミールス店が掲げるMEALES READY、“ミールスの準備が出来ました”の看板はインドの街風景のひとつと言っても過言ではありません。

具体的に中心となるベジ料理は、サンバル(豆と野菜の煮込みカレー)、ラッサム(酸味を利かせたスパイススープ)、ダール(豆のカレー)です。さらに、パパド(パリパリ豆せんべい)、ヨーグルト、ウールガイ(アチャール / 漬物)あたりがミールスの基本中の基本となります。当店では、バスマティライスで召し上がっていただき、現地ではホワイトライス(スチームドライス / バスマティをはじめ日本のお米に近いもの)か、ボイルドライス(もみ米の状態で蒸して、そのまま乾燥させ、精米したお米)で楽しみます。場合によっては、ロティ(チャパティ / 薄焼きパン)がまずはサーブされ、ロティを食べ終えると、すかさずライスがサーブされるというスタイルもあります。

ベジミールスとノンベジミールス

ミールスは、ベジ料理が中心の定食とご紹介しましたが、ベジ料理のみのミールスと、魚や、肉の料理、ノンベジ料理を組み合わせるミールスがあります。ベジミールス、ノンベジミールスどちらも、前記の基本は共通です。サンバル、ラッサムなど、基本の料理たちは、日本の定食でいう、ご飯と味噌汁、漬物、小鉢(冷奴など)的な定番要素なのですが、ミールスではこちらが主役です。ノンベジミールスの魚や肉の料理は、特別枠、ゲスト、戦隊ヒーローでいう六人目の戦士的なポジションといえます。

ミールスの歴史

ミールスという食事スタイルが、南インド、特にタミル料理を語る上で欠かせないのは間違いありませんが、スタイルに対して、言葉は比較的歴史が浅いといえます。
ミールスはMEALS。英語で食事を意味するMEALSを語源としています。いわゆる英語のインド化と呼ばれるものです。

ミールスはある種シンプルで情景がつかみにくいので、ここで少し横道にそれます。ミールスと同じく、インド化された英語にホテル、ティファンがあります。当店でも店舗の看板にHOTELの看板を掲げておりますので、稀にご質問をいただくことがありますが、インドにおいてホテルは、食事をする所を指します。

宗教などの文化により、レストランなどの外食文化がなく、不特定多数と食事の空間を共にすることが少ない古くのインドにとって、レストランの文化はイギリスの文化であり、長く一般化されることはありませんでした。外食文化が根付き始めたのは、独立後頃からのため、レストランのスタイルは長く、イギリスの人々が集まるホテルに限られていました。そのため、レストランよりも食事をする所としてはホテルがイメージとしてスムーズな名称であり、そのまま使われるようになった、が有力です。
軽食を指すティファンは、TIFFIN。TEA(茶)とMUFFIN(マフィン)が組み合わさった古い英語、一応現在でも、ほぼ同様の意味でイギリスなどで使われているTIFFINがインド化された言葉です。こちらもミールス同様ではありますが、弁当箱を指すTIFFIN BOXという言葉もインドにはあります。
ほかにもまだまだインド化された英語はありますが、あまり形式ばっていない、語源や文法に則てはおらず、ある種切り離し、すぐに意味が伝わる新語として英語を使っているとも言えます。ミールスがあまり形式ばった料理の内容を指さず、スタイルを指しているのが、このあたりからも感じ取れます。

南インドは菜食文化?

正確な数字が出ていないので諸説ありますが、インドでは3割以上の方が菜食主義と言われており、特に南インドは、ミールスをはじめ、菜食料理のイメージが強いため、菜食料理が中心と思われている方も多いかもしれませんが、実はそうではありません。
何分、人口が多いので、こちらも正確な数字が出ていませんが、北インドのほうが菜食主義の方が割合が高い州が多いというデータもあるそうです。インド国内でも、南インドは菜食料理のイメージが強いそうですが、これは、南インド料理をレストランで提供するため、ミールスをはじめ、キャラ立てした結果であろうと想像できます。
エリックサウスでも多種多彩なお肉のカレーをご用意しておりますが、むしろ、南インドのタミル地方などは、インドでもノンベジ、肉食料理がとても盛んな地域です。美味しい肉料理がありながら、それでも毎日のように食べたくなる料理、それがミールスをカタチづくる、サンバル、ラッサム、ダールたちとも言えます。

ミールスは混ぜる料理?

半分正解で半分間違っています。ミールスが認知度を上げてきた中で広まっている情報や、スパイスカレーの一部にある混ぜるスタイルなどからの情勢でいえば、あえて間違っているとさせていただいても良いかもしれません。まずは、それぞれのカレーや料理を楽しむ、徐々に、段階を経て混ぜていきます。

エリックサウスでも、混ぜるを主軸にした食べ方を紹介していた時期がありました。なぜなら、複数のカレーを混ぜるや、ライスとよく混ぜる(こねる)スタイルは従来の日本のカレー文化とは異なり、ある種のハードルのようなものがあったため、まずは、そういったスタイルを広めるところに軸を置いていたためです。
どのように、混ぜるに行きつくのか、(エリックサウスでの)詳しいミールスの食べ方はぜひコチラでご覧ください。

お肉のカレーはどうする?

ノンベジミールスの肉料理(カレー)は、他の料理(カレー)と混ぜません。単体でお楽しみください。どちらかと言えば、序盤から中盤で存分に楽しんでいただく。日本の会席料理でいえば、ご飯と汁物の手前までのご馳走、肴です。〆に向かっては、ミールスの基本たち、サンバル、ラッサム、ダール、ヨーグルト、パパド、ウールガイたちで仕上げて行きます。もちろん、最後まで手をつけないわけではありません。もうひとつ例えるなら、ものすごく豪華な茶漬けの御膳です。茶漬けにする前にそれぞれ、そのままを楽しむ、それぞれ茶漬けにしても楽しむ、仕上げに、全部のせで茶漬けをかっこむみたいなスタイルです。そして肉のカレーは茶漬けの具兼の料理ではない料理、お茶とは相性の悪いけれど、ご飯にのせても美味しい、旨みたっぷりの煮汁を含んだ煮魚的なポジションです。

ノンベジミールスという言葉があるので答えは出ているのですが、ミールスの主たる食べ方が出来ない料理を含むのはミールスでなくなるのかと言われれば、そうではありません。その構成を含む食事スタイルがミールスです。逆説的に、主な食べ方、混ぜる、に含まれない料理も一緒に楽しむこと“も”あるスタイルです。

ノンベジミールスで上記に対して例外的なのが魚料理、フィッシュミールスです。フィッシュカレーのスパイス構成はサンバル、ラッサムたちと相性が良く、似ているところがあります。仕上げにむかって、魚料理を軸にベストな組み合わせを探していくことも出来るため、ベジミールスと並んで、ミールスのスタイルを存分に楽しんでいただくには申し分ない構成です。

ミールスは不思議な魅力で溢れています

前記した通り、お肉のカレー以上に現地で愛される料理たちではありますが、お肉などのコクがベースの日本のカレーとは異なるものであることは間違いありません。
(こちらもあわせて読んでいただけると嬉しいです。インドカレーとは?
酸味など、カレーライスのイメージで食べ始めると不思議な味わいかもしれません。それがヤミツキになり、食がとても進みます。
エリックサウスでは、ミールスは基本の構成に加えて、1種または2種、カレーを選べます。店舗でもおススメさせていただいている、菜食料理(ポリヤルなど 、汁気のないもの)と、菜食カレーを選んでいただいても良いですし、お肉のカレーを選んでいただいても、お楽しみいただけます。もっともミールスらしい、ミールスの主たる食べ方に沿って構成するか、お肉のカレーを含む、スタイルとして南インド料理を色々と楽しんでいただくか、自由に、毎日食べても食べ飽きない、南インドのスタイルをお楽しみいただけましたら幸いです。

エリックサウスのオンラインショップでは、お店の味わいをそのまま冷凍。
お家でも南インド料理店そのままをお楽しみいただけます。